昨日の日記で封印していた(故)中島らも氏のエッセイをちょこっと触れたので
おっちゃんの命日7月だけど、最近リリパットアーミーの
上映映像が見たくて仕方がないのですね
中島らも氏はいつも劇団というか 笑いなんてものは
人に残らなくて良い、人がその場で笑い時間が過ぎ
後は客が内容を思い出せない程、下らないものこそ理想である。的な事を良く
書いてはいたけれど
ベイビーさん~あるいは笑う曲馬団~これだけは、何回見ても泣くんですよね。
時代設定は満州事変で
上司と部下である2人の日本帝国軍兵士が
奉天の攻防戦で、中国側の砲撃の雨嵐を回避していると
塹壕の中2人して雑談をして馬鹿笑いしながら盛り上がっていると
部下の方へ手榴弾が飛び込んで参りました。
しまった!と思った時にはもう遅く 咄嗟に、上司が部下を庇いまして
結果として部下は多少なりとも怪我を負いつつ生存したものの
とても慕っていた上司の姿が周囲に見当たらず・・・・・砲撃も止まない
部下は上司は爆風で飛ばされて死んだのだと諦め
そのまま逃げ延びまして、後に日本帝国軍の上層幹部へ出世するのでありました。
そして 死んだかもしれない?
上司の兵隊さんはというと・・・・・何処なのでありましょう??
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜 此処での 一と 殷盛り
今夜 此処での 一と 殷盛り
サーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒(さか)さに手を垂れて
汚れ木綿の 屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
という中原中也のサーカスの詩を
ドードーさんというサーカス団の座長さんが
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよんと歌います。
(ドードさんはサーカスの団長さんんのくせに
「ゆあーん」 「ゆよーん」 しか言葉を言いません)
このサーカス団には癖のある人達が寄り集まっていて
団員も団長さんと対を張る勢いです。
しかし、団長さんのドードさんと同じで
心根は優しい人達です。
浮世の戦火を尻目に
サーカス団は何時もわいのx2楽しそうで
ある日、戦争の影響で孤児となった少年が盗賊として
このサーカスへ食べ物を盗みに来ました。
団員に何故か一発で少年がまだ、素人の賊だと見抜かれてしまい
少年はそのままサーカスの一輪車乗りとして団員になる羽目に。
条件として1ヶ月以で1輪車を乗りこなせれば此処に居ても良い
それまでに逃げたければ逃げれば良い。という事を言われ
この時少年は乗れなければ此処からv出て行け。と言われていると勘違いするのですが
半月ほどして団員さんに”上手くならないから出て行かなきゃと本音を言うと
”こんな動物がたくさん居て、本当の母ちゃんと父ちゃんじゃないけど
代わりの親が沢山居て、兄ちゃん姉ちゃん居るのに出て行くのかね??!”と言われて
初日から自分は家族としてサーカス団に迎えられていたという事に少年は気がつくのです。
その時少年が気に入ったサーカスの動物が
ベイビーさんという生き物で、少年には ” きれいな 白い 馬”
に見えているようでして・・・・・・・・
団員さんたちは少年に
「坊主はそうかーベイビーさんは 白い馬に見えるかー」 ウフフと笑って
それ以上何も言わないので、少年は団員が
自分をからかっている。としか思いません。
そのころ
日本軍の慰問として、このサーカス団に白羽の矢が立ちます。それを立てたのは
奉天の荒野で砲撃を受け、上司に庇われた事で生き長らえ
少佐クラスに昇格した、あのときの軍人さんでした。
砲撃で上司が行方不明になった時上司を泣いて探した優しさは
今はもう、この軍人さんには無い様で・・・・
サーカス団の慰問で動物を見て
「このご時勢に ゲラゲラ笑い
ゾウだの 虎 だのを 飼える贅沢が 此処にはあるのだなあ!」
となんだかサーカス団へ嫌味ばかり言いますが
「少佐・・・・・・自分には ゾウとキリンしか・・」「え・?・ゾウとチンパンジーでしょ!・・」
「ええ!ゾウとクマしかいません!」「あれはゾウと鷹じゃないか!」
等と部下達と少佐の間で
ゾウと虎のゾウ以外は誰も意見が合わなくなり
少佐が「志気が下がっている証拠だ!あれはトラではないか!トラ以外に見える者は許さん」
といった勢いで部下を黙らせると慰問のサーカスが始まり
ここで軍とサーカス団は双方行き交う機会も無いように思えたのでしたが
数日後・・・・
この少佐の上司である軍の将軍がある私情から
このサーカス団員の2人を死に追い詰めた挙句に
虎が食べたい。軍で是非とも
トラ鍋をしよう!と将軍が言い始めたので、当初は困惑した少佐でしたが
少佐は、あのサーカスにトラがいたなと、ベイビーさんを捕獲する事を決め
抵抗するようであれば、ドードーさんのサーカスを潰そうと出ます・・・・・・・・・・・
その時
嬉しいときは 「ゆやーん」
悲しいときは「 ゆよーーん」しか言わないドードーさんが
”お前には アレが 虎に見えるか そうか・・・・”
ぶっさいくな あの許婚はどうした! この 豆腐屋のドアホが
目をさ覚まさんかあああ!!”
と突然 まともに喋り出し、少佐に渇を入れた挙句
少佐の過去を知っておりまして、少佐はこの時
このドードーさんが過去に自分を手榴弾から庇って死んでしまったと
思っていた自分が今でも矢張り一番大事な上司だった事に気がつくのです。
ドードさんでは無かった頃の日本帝国軍の部隊長は
爆撃で両手を失ったときに、軍人という立場で
戦争をする人間というものに大層嫌気が差して歩いていると
その時ベイビーさんを拾ったのだそうで
ベイビーさんは人が見たい動物に見える
そうした人の「欲」を現した生き物なのだそうです
*ドードさんには,拾い主なだけに
ベイビーさんが本来の姿のベイビーさんに見えているらしい。
少年がベイビーさんを白い馬だと言ったのも、そう見えているのも
最初から盗みが目的ではなく
「サーカスならきっと綺麗で白い馬が居る」と思って
孤児になった不安を紛らわせたかった。というだけで
このサーカスへ不法侵入したものの、団員に見付かった為に
自分は賊だと騒いだだけだという事をドードーさんが最初に理解していたのでした。
ベイビーさん始め、やがて集った団員達で今のサーカス団を立ち上げて
ドードさんは団長として
ドードー鳥のドードさんとして生きると
彼は人でいること自体止めることを決意したそうで
「ゆやーん」「ゆよーん」しか言わなくなったと
少佐に経緯を説明しますが
「ですが!既に命令を出してしまって・・・・私は どうすれば・・・」
「甘えるな!ボケ!」
等と少佐がドードーさんは元上司だと判った途端次第に
オロオロ感情丸出しで、自分が蒔いた種だとはいえ
一体どうすれば国家権力から
ベイビーさんとサーカス団を救えるのか!と少佐はドードーさん達と打開策を練るのです。
そしてベイビーさん捕獲当日
劇団員の正体が続々団員自ら紹介され
場は一旦修羅場と化しますが、少佐が乗り込み
「
この御時勢に貴様等は贅沢だ!」
ベイビーさんに向けてそのまま銃撃すると・・・・・・・
「笑う暇があれば国に奉仕せよ! 部下のお前たちは下がれ!ご苦労」
少佐のそんな激怒と解散せよとの命令で
兵士達は解散し
場には少佐とサーカス団員、死んだベイビーさんと
それに泣いて縋る少年が居まして
「こんな 時代に 軍人に!! 空砲など 撃たせるな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フウ・・・」
ということで、少佐は将軍にはネズミでも持っていくと言って
サーカス団と和解するのです。
少佐としては、ドードーさんを見殺しにしたと思い込み
心が荒んでしまっただけで
元々性根の優しい軍人さんでしたから、身元が誰かと判れば
ドードーさんたちを助ける気で居るようで、サーカス団ごと国外へ逃がそうと
職権乱用をしようと思考するのですが
団長のドードーさんたちは、それを断ります。
サーカスの小屋は、いざとなれば気球として
好きな場所へ移動可能だからです。
団長と団員さんは、一輪車乗りの少年に
一番行きたい場所は何処かと尋ねると
”戦争の無い国!”と言うので、サーカス団は小屋を気球にして満州を去り
サーカス団を乗せ遠く去っていく気球を少佐は嬉しく見送るのでした。
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という感じの劇で
所々セリフとかスッ飛ばしている内容もありつつ
切ないし、暖かいし自分はこの作品非常に好きです。
VHSを見ても台本として出ている
書籍を読んでも泣ける劇でして
元はリリパ仕込み編&バラシ編という2冊からなる台本文庫本に収録されていて
現在は編集されなおして
子供の一生&ベイビーさんの同時収録本として文庫が出ているようですね。
VHSは所有しているのだけど、デッキがブッ壊れていて
再生器具がないので、映像としては見る機会はもう無さそうですが
扇町ミュージアムスクエアも現在は在りませんし
多分というか、もう十中八九
DVDに、ならないでしょうね。
リリパは子午線、子供の一生、ベイビーさん、人体模型の夜 好きなんだけどな
作品が好きなだけですから見たいのだけどな・・・・・・
某Fさんを抜いて、鮫肌さんとキッチュさんと山内さんあたりで
ベイビーさん、どうにかならないのかな
あの3人で桃天再演したみたいだし、特に鮫肌さんとキッチュさんだと子午線見たいな
中島らも氏は客の心に残らない芝居を作っている。とは良く書いていたけど
実のところファンには残っている部分は残っているよと思ったりして
何かもう、逝去されてから9年たつ訳だけど